Armは、自動車向けの新しいCSS(Compute Subsystems)「Zena CSS」を発表した。AI定義型自動車の時代に向けたものだ。エンジニアリングリソースを20%削減し、SoCの開発期間を最大12カ月短縮できるという。
Armは2025年6月4日(英国時間)、自動車向けの新しいCSS(Compute Subsystems)「Zena CSS」を発表した。既に一部顧客に提供していて、2025年9月から一般向けにも提供を始める。発表に先立つ同年5月29日、Armの日本法人であるアームは記者説明会を開催した。
Armは、半導体メーカーがより簡単にSoC(System on Chip)設計を行えるよう、複数のIP(Intellectual Property)をCSSとしてセットで提供している。アーム 社長の横山崇幸氏は「Armにおいて自動車向けはインフラ向けと並んでビジネスが成長している領域で、引き続き重要視していく。自動車向けSoCの構成は非常に大規模かつ複雑で、大手の半導体メーカーも苦労して開発している。競争力を維持するにはより高度なコンピューティング能力が必要で、それをサポートするのがCSSだ」と説明する。
今回発表したZena CSSは、自動車の中でも特にAIによって機能や性能が定義づけられるものへの採用を想定している。横山氏は「車載半導体開発はソフトウェア定義型自動車(SDV)を超えて、AI定義型自動車(AI-Defined Vehicle)の時代になってきている。そうした時代に向けて届けるものだ」とした。
Zena CSSは、16コアの「Cortex-A720AE」、CPU間を接続する「Neoverse CMN S3AE」、機能安全を実現するリアルタイムプロセッサ「Cortex-R82AE」、Over The Air(OTA)での更新に対応するセキュリティエンクレーブで構成される。パフォーマンスは自動運転L2+や車載インフォテインメント(IVI)アプリケーションに向けて最適化されているという。
Arm オートモーティブ事業部門 GTM・アライアンス担当 バイスプレジデントのBruno Putman氏によると、Zena CSSを利用することで、エンジニアリングリソースを20%削減し、SoCの開発期間を最大12カ月短縮できるという。同氏は「Zena CSSへの業界の反応は非常に良い」と強調した。
さらに、クラウド上でのバーチャルプラットフォームを利用したZena CSSのバーチャルプロトタイピングも既に可能になっている。
記者説明会では「SoCを手掛けるメーカーと競合するのではないか」と質問があった。これに対してアーム オートモーティブ事業部門 シニアマーケティングマネジャーの石川誠司氏は「計算能力は重要だが、開発リソースは有限だ。『いかに他社より速く計算するか』というフェーズではないと考えている。Zena CSSを利用することで必要な計算能力を早く確保し、AIや画像処理に関わる部分で差別化を図ってもらえる」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.